2005年3月10日

食道

1 :いこーる :2005/02/28(月) 21:10
アンリアル。
紺野、田中、藤本、石川。
食べ物いっぱいでてくる話。
多くのメンバーが出てわいわいやりたいです。

2 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:10
宥坐之器者
虚則欹 中則正 滿則覆

毛筆でそう書かれた紙が額縁に飾ってある玄関をくぐると
そこはもう私たちの道場になる。

「おはよーございます」

ふかぶかと挨拶をしてから中に入る。
玄関をくぐると土間があって上がるとすぐに2つの扉。
右の扉は洋間に
左の扉は和室に続いている。
3 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:10
えっと今日の練習メニューは……

「お、田中ちゃんおはよー」

振り返るとそこには藤本さんが立っていた。

「おはよーございます」

もいちど大きくお辞儀をして
私は藤本さんに聞いた。

「藤本さん、今日どっちでしたっけ?」
「ん?田中ちゃん予定表見てないの?」
「……はい、ごめんなさい」
「そんなんだと家元に怒られちゃうよ」

といいつつ藤本さんは自分のポケットから
一枚の紙を取り出した。

「うーんと……」

知らねぇのかよ!
なんだ藤本さん、私と同じじゃないか。

「今日はねー、あっお刺身だって」
「じゃあこっちですね」

私は左の扉、和室に向かった。
4 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:10
私たちが正座をして待っていると
すぐにお刺身が3人分運ばれてきた。

「わぁ美味しそう!」

私は感嘆の声を上げた。
すると藤本さんが私の膝をぴしゃりと叩いた。

「しっ、静かに!」
「ごめんなさい」
「そうです、お静かに」

ちょっと弱そうな声がしたと思うと
奥のふすまが開いて家元が入ってきた。

「田中ちゃん
 膳が運ばれてきたときから「食」ははじまっているのです。

 食は音を立てず静謐に、
 各の幸福に於いて執り行うべし。 

 教えたはずですよ」

そういって
私をやんわりとしかりつけて登場したのが

食道紺野流13代目家元、紺野あさ美師匠。
5 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:11
家元が座るといよいよお食事タイムである。
今か今かと待ち構えていると紺野師匠

「今日は基本から復習しなくてはなりませんね田中ちゃん」
「はい、すみません」

どうやらお刺身はしばらくおあずけのようだ。
隣を見ると明らかに迷惑そうな顔をした藤本さん。
私の巻き添えをくって、食事開始が遅れてしまって怒っている。

……ごめんなさい。

「紺野流食道の第一教義、暗唱しなさい」
「はい」

家元にそう言われて
私の背筋が自然と伸びた。
6 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:11
「えっと

  食は第一のものにして、神と雖も之を妨ぐべからず。
  食はよろずにまされり。
  彼の食の時を妨ぐるは、食を知らざるなり。
  食せども喜びを知らぬは、また食を知らざるなり。
  食を前にして、……

 えーっと……」
「まだ覚えてないのですか?困ったもんです。
 では藤本さん」

と指名されて今度は藤本さんの背筋が伸びた。

「はい

  食を前にして、誰か雑事に心を惑わさん。
  世の乱れ、人の惑いを抑え
  鬼神を感嘆せしめ
  生命を喜ばしむるは食なり。

 です」
「よくできました」
7 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:11
ぽんぽんと拍手をして
家元は再び私を向いた。

「いいですか?神であっても食を妨げてはならない。
 人が食事を前に全てを忘れてワクワクしているのに
 今のような奇声をあげては妨げになります」
「ただ、れいなは美味しそうだなって……」
「だめです。
 そうやって気持ちを他者と分けあおうという姿勢が甘えにつながるのです。
 食の幸福は自分ひとりで感じ取らなくてはなりません」
8 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:12
紺野師匠の教える「食道」とは
食事の時間を極めるための道だ。

家元の著『紺野流食道教義 口語訳』の序章にこう書いてある。

「食事の時に感じられる幸福感には個人差がある。
 ある人は多く感じ、あるひとは少なく感じる。
 この食の幸福感を高めるためにはその人の精神を鍛えればよい。
 食道の鍛錬によって、一つの食事が天にも昇る幸福を与えてくれるようになる。
 食の福を極限まで高め、人生の幸福を感じ取るのが食の道である」

まあ要するに食事の時間を楽しむ心を育てるのが「食道」というわけだ。
もともとの「食道教義」は漢文訓読体で書かれているため現代人には読みづらい。
それを現代語訳したものがこの『紺野流食道教義 口語訳』なのである。
この本は付録の紺野師匠ブロマイドの効果もあって今やベストセラーだ。

っていくらなんでも言葉堅すぎやしないか、と私はいつも思う。
9 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:12
さてさて今日のレッスンはお刺身だった。
お醤油のからめかたや口への運び方、
噛み方、のみこみ方、余韻の味わい方などを
逐一指導されながら食べる。

そんなことでは息が詰まると感じるかもしれないがそんなことはない。
食道は決して「上品に」食べるための教えではない。
あくまで「幸せに」食べるための教えなのだ。
だからこれを鍛えると本当に食事が楽しくなる。

私も食道を始めて半年、
ご飯がこんなに楽しくなるとは思ってもみなかった。

私と藤本さんのレッスンが終わり
家元が「お茶にしましょう」と言ったので
ややくつろいで(お茶は「やや」くつろぐのが掟)待っていると
外から声がした。

「たのもー!!」

バカでっかい声でそう叫んでいる。
10 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:12
「紺野流食道家元、紺野あさ美!
 たのもー!」
「あらあらめずらしい。
 いまどき道場破りなんて」

そういって師匠は扉を開けた。
そこには私よりも背の低い
目のくりっとした女が立っていた。
巨大なクーラーボックスを抱えている。

「私の名は辻希美!」

あーっ!と私は大声で指差した。

「辻希美!!」
「だからそうだって……」
「ホンモノですか?」
「おう!」

アメリカ食事リーグの最強コンボ「W」のリーダー。
向こうじゃグレート・イーターの名を誇る
日本発、世界にはばたく食事バトラーである。

超有名人。
11 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:12
「あなた……食事バトルのチャンピオン?」

しかし家元は落ち着き払って受け答えをする。

「そうだ!
 日本一とかほざく紺野流に
 世界の広さを思い知らせに来てやった!さあ勝負しろ!」

「W」といえばアメリカ最強。
そのリーダー直々に勝負を挑んでくるなんて!
私は不安になって

「家元……」

と紺野師匠の袖を引いた。
和服の袖がぴんと張る。
しかし師匠はうっすらと笑みを浮かべていた。

「ふん、歴史の浅いアメリカリーグのバトラーなど
 紺野流の敵ではありません。だいたい発想からして」
「やかましい!能書きはいい。さ、勝負しろ!」
12 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:13
そこで師匠
ふっ、と笑った。

「いいでしょう。ところで、お品は?」

家元がそう聞くと辻希美はボンと
クーラーボックスを叩いた!

「アイスクリームだ!」

なんということ。
アイスはチャンピオンの得意分野ではないか。
なるほど、全力で紺野師匠に挑もうってわけか……

「そう、じゃこっちは……」

家元はくるっと後ろを振り向いた。

「焼肉で」

え?
焼肉?

てっきり芋が出てくると思ったら師匠は焼肉と言った。
アメリカチャンピオンが本気モードなのに
師匠は「ほし芋」を出さないのか?
13 :1 食は音を立てず :2005/02/28(月) 21:13
そう思ったら
予想外の言葉が飛び出した。

「藤本さん、ちょっとこのコのお相手をしてやってちょうだい!」
「ええ?」

藤本さん自身も驚いた表情を見せている。
師匠は余裕たっぷりの顔で言った。

「大丈夫、あなたなら勝てます。刺身でお腹ふくれたところだからちょっとハンデだけど、まぁあの程度の相手なら大丈夫でしょう」
14 :いこーる :2005/02/28(月) 21:14
こんな感じでやっていきます。
お付き合いいただけると嬉しいです。

ちなみに
この物語は読者レスまで巻き込んで展開させたいと企んでいます。
紺野流道場に、みなさまの熱い声援をお願いします(なんのこっちゃ)。
15 :名無飼育さん :2005/03/01(火) 09:30
すごいのが始まったな~。
どう転がっていくのか楽しみです。
16 :名無飼育さん :2005/03/01(火) 15:33
面白そうな話が始まったー
これからの展開がとても楽しみ。
17 :名無し飼育さん :2005/03/01(火) 19:41
うーん、辻が勝って紺野流を傘下におさめる展開がいいな!
ふっふふ
18 :名無飼育さん :2005/03/02(水) 00:34
なにおう!
紺野が食べてる時の幸せそうな笑顔に辻がかなうもんかあ!
19 :いこーる :2005/03/07(月) 22:18
更新参ります。
20 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:18
辻希美を洋室に連れて行くと師匠は七輪を取り出してきた。

「冷蔵庫にカルビがありました。
 練習用に買った特売品ですが、
 あのちっこいの相手ならこれで十分です」

え?と私も藤本さんも驚きの表情を浮かべた。

「師匠……ちっこいのって、相手はアメリカ1ですよ!」

辻希美がどれほどの有名人か師匠は知らないのだろうか?

「藤本さん!」

師匠はいつになく真剣な表情で藤本さんに向いた。

「あなたの焼肉が負けると思いますか?」
「で……でも」
21 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:18
師匠はそっと藤本さんの肩に手を置く。

「し……ししょう?」

師匠は見ている私がどぎまぎしそうなほど
藤本さんに顔を近づけて言った。

「大丈夫。あなたはいつも通りにしてなさい」
「……」

しばらく
藤本さんと師匠は見詰め合っていた。
藤本さんの頬が上気して赤くなってくる。
まるで
師匠の食への熱い想いが藤本さんに転送されていくみたい。
藤本さんは
力強く

「わかりました!」

うなづいた。
師匠を信じる。
それが
弟子だ。
22 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:18
「それから、田中ちゃん」
「はいっ!」
「あなた手合わせ見るの、初めてだよね?」
「はい」
「じゃあよく見て勉強しておいて」
「はい!」

食の福を極める食道は基本的に個人プレーである。
だから普段の練習はもくもくと食卓に向かうのみだ。
TVでアメリカリーグを見たことはあるが
この道場で試合が行われるのを見るのは
これが初めてだ。

しかしなんてことだろう。
初めて見る手合わせがあの辻希美だなんて。
明日友達に自慢しちゃおう!
23 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:19

そこで
私は窓を見てみた。

ぎょっとした。
なんと
辻希美の追っかけ達が応援に駆けつけていたのだ。

「し……師匠!あれ!」
「え…うわぁ!」

なんだこいつら。
数人で横断幕までかざしている。

<紺野流を傘下におさめろ!>

なにおう!
いくらチャンピオンでも師匠にかなうもんか!

24 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:19
追っかけさんたちは放置のまま手合わせに突入する。
私と師匠が部屋の正面に立った。

「では……」

師匠はそういって両者
右側の辻希美と左側の藤本さんを見た。

「先手は辻さん。品はアイスクリームで。時間は3分です」
「よしきた!」

チャンピオンはクーラーボックスを開けた。
25 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:19

先手:辻希美(グレート・イーター)

アイスクリーム

26 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:20
「……すごい」

私は目を見張った。
クーラーボックスの中には
ぞろりと数え切れないほどのアイスクリームのカップが並んでいる。

「師匠、ラベルが英語で書いてある。ああいうの高いんじゃないですか?」
「アメリカリーグの人だからでしょう。それに……」

師匠は相変わらず落ち着き払っている。

「食は値段じゃない」

チャンピオンは右手でアイスを持った。
直後、私はすごいものを目撃する。

カポン

「ええ!?」

なんとチャンピオンがカップを持った途端、
アイスの蓋がひとりでに開いたのである。

「へぇ……」

さすがの師匠もこれには驚いたようだ。
27 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:20
「側面に力を加えてキャップを外したのかな?
 ずいぶん器用だねぇ」

しかし

「あれ?止まっちゃいましたよ」

チャンピオンはその場でアイスを睨みつけたまま動かない。

「早く食べればいいのに……」

なぜかアイスを持ったまま唸っている。

「むむむむむむぅ……」

何してんだ?と思ったそのとき

「はぁ!!!」

ポン

カップの中のアイスがまるごと飛び出したのだ!
何だあれは?手品か?
28 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:20
飛び出したアイスを

「はむっ」

チャンピオンはまるごと口に入れた。
口をもごもごやって

ごくん

「うめぇ~!」

歓喜の声を上げた。


何と人間離れした食べ方!

29 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:20
しかしこれで終わらなかった。
今度は左手でカップを持つと再び

ポン

「はむっ」

ごくん

その間に右手で次のカップを持って

ポン

「はむっ」

ごくん

見る見る間にアイスが減っていくではないか!
右!左!右!左!

次々をアイスを取り出しては空中に投げて口でチャッチしていく。
30 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:21
これが
アメリカナンバー1の力!

すごすぎる……

3分経つころには
クーラーボックスはほとんど空になっていた。

「そこまで!」

師匠の声がした。

「へへっ、やっぱアイスは最高!」

感無量といった表情。
おーっこれがチャンピオン至福の瞬間か!

おいしそう……

私もアイスが食べたくなってきたぞ。
さすがだチャンピオン。
31 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:21
「それでは後手に参りましょう」

師匠はそう言って藤本さんを見た。

はっ
そうだ、つい興奮してしまったが今は手合わせ中なのだ。

しかし
こんなすごい相手に藤本さん、大丈夫だろうか。
32 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:21

後手:藤本美貴(焼肉の貴婦人)

徳用カルビ

33 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:22
藤本さんが七輪をパタパタやって準備をしている間
辻希美がこちらに歩いてきた。

私の方を見てにこっっと笑った。歯を見せて。
チャンピオン、愛嬌もあるんですねぇ。

「どうだった?」
「感動しました!サインください」
「うん、後でね」
「確かに……」

師匠もこちらに歩み寄って話しかける。

「なかなかたいしたものでした。
 食後の満足げな表情。かわいかった。
 アメリカ人があなたに夢中になるのがわかりました」

師匠がそういうとチャンピオンはてへてへと笑った。

……てへてへ?
34 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:22
「でも……」

師匠はそう言って、藤本さんを指差す。

「御覧なさい」

見て、私は息をのんだ。

藤本さんは完全に自分の世界に入っていた。
唇をすぼめて七輪をふーふーすると
カルビを一枚、網にのせた。

じゅうぅぅぅ~

カルビの焼ける音を聞いて
藤本さんは目を輝かせて、なぜかうなずいた。

反対側も

じゅうぅぅぅ~

またしてもカルビはいい音を立てた。

「あはっ」

笑っていた。
まだ焼けてないカルビを前に、藤本さんは笑っていた。
35 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:22
「藤本さんはね、焼肉の貴婦人。
 焼肉の幸せを誰よりも知り尽くしています。
 ほら御覧なさい、あの恍惚とした表情。
 見た目、音、におい……すべてが彼女の幸せになっています」
「……」

辻さんは真剣な表情で藤本さんの食にみいっていた。

「……あんな楽しそうに肉食べる人、始めてみた」
「あっ、お肉焼けたみたいですよ」

藤本さんは七輪からカルビを拾い上げて
裏表がしっかり焼けているのを
これまた楽しそうに確認する。

「焼けたっ!」

カルビをソースに絡める。
そうして

「いただきまーす!」

パクっ

「んーーーーーーーーっ。たまんない!」

うわー、おいしそー。
あの表情やばいって!
36 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:23
「どうですか?Wのリーダーさん。
 あなたが必死にアイスを10個食べているのと同じ時間
 彼女は一枚の徳用カルビであそこまでの幸福に至れる。

  食を以て喜ばしき時と為す。これ貴き食なり。
  食は物にあらず。食の心は喜びの時なり。

 物量にものを言わせるアメリカリーグと
 我々の食道との違いはここにあります」
「……そっか。あんないい表情されちゃかなわない」

辻さんは床を見つめてぽそっと言った。

「まだまだだな。私……」

師匠は藤本さんに言った。

「そこまで!」
「はい!ごちそうさまでした!」

藤本さんはぺこりとお辞儀をした。
37 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:23
「日本の食道、恐るべし」

そういった辻さんの表情はどこかしら爽やかな雰囲気が漂っていた。
負けてもかつ爽やかな彼女の目。
すごくきれいだと思った。

「藤本さん、あなたコゲついた部分を我慢しながら食べてるでしょう。
 コゲもどうにか楽しみの一つに組み込まないと
 あなたの焼肉はもう頭打ちになっちゃうかも」
「……そう、ですね」

藤本さんは神妙な顔で

「ご指導ありがとうございます」

頭をさげた。
続けて師匠は辻さんの方を見た。

「辻さん」
「私の完敗だ……」
「いえ、あなたのアイスクリームすばらしいですよ。
 何より、アイスが好きなんだなぁっていうのが伝わってくる。
 どうです、この道場に特別顧問として来てくれませんか?」
「え?」
38 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:23
「実はうちの少年部に清水というアイス専攻の子がいるんですよ。
 実力はまだまだなんだけど磨けば光りそうで。
 よかったらその子の指導をして欲しいんだけど」

そう言われて辻さんは頭をかいた。

「うれしいな。私もここで勉強させて欲しいけど
 向こうで待ってる相方に聞いてみないと……」
「相方さん、ご専門は何?」
「お菓子だよ……スナック系」
「そう……」
「とりあえず、いったんアメリカに戻ることにするよ」
「わかりました」

辻さんはそういって
クーラーボックスを持って帰っていった。
39 :2.グレート・イーター VS 焼肉の貴婦人 :2005/03/07(月) 22:23
「師匠……」
「なぁに田中ちゃん?」
「食道てすごいんですね。チャンピオンを打ち負かしちゃうなんて」
「そうよ。田中ちゃんも自信を持っていいと思うよ。
 きっと世界で通用する力がつくはず」
「そんな、れいなまだまだです」
「そう……ね。まだね」

師匠はどこか含みのある笑顔で私を見た。

「はい」

その意味はよくわからなかったけど
とりあえず大きな声で返事をした。
40 :いこーる :2005/03/07(月) 22:24
本日の更新は以上になります
41 :いこーる :2005/03/07(月) 22:27
>>15
どうもーご期待いただき恐縮でっす。
これからもごろごえろ転がしていくのでよろしくです。

>>16
展開……はい頑張ります!

>>17
うおう!いきなり敵さんのファンから書き込み!
おぬしスパイか!!紺野流は無敵です!

>>18
心強い応援ありがとうございます。
我らが師匠は今日も幸せ満点です。
42 :ぽっと :2005/03/08(火) 14:08
真剣なやり取り、でもよくよく考えるとちょっと笑える設定。最高です。
今後、石川さんがどのように絡むのかを楽しみにしてます。

紺野流に入りたくなっちゃった…。